
■ 肺炎は高齢者の大きなリスク
日本人の死因の第5位が「肺炎」で、その約95%が65歳以上の高齢者です。
原因となる菌の中で最も多いのが肺炎球菌です。
肺炎球菌は、いくつかの“型”があり(菌の種類の違いを指します)、その型をどれだけ多くカバーできるかがワクチンの効果に関わります。
これまで日本では
- ニューモバックス®(PPSV23):23種類の肺炎球菌の型をカバーする「多糖体ワクチン」
が定期接種(公費対象)として広く使われてきました。
この制度は今後も継続され、65歳の方や60歳以上で重い持病がある方が対象となります。
ニューモバックスについてはこちらをご参照ください。
■ 新登場:21種類の型に対応した「キャップバックス®」
2025年8月、新しい肺炎球菌ワクチン「キャップバックス®筋注シリンジ(PCV21)」が承認され、10月29日から全国で自費接種として利用できるようになりました。
このワクチンは、21種類の肺炎球菌の型に対応しており、これまでのワクチンではカバーできなかった型(たとえば「15A」「16F」「23A」など)も含まれています。
つまり、より多くの種類の肺炎球菌から体を守ることができるのです。
また、キャップバックスは「結合型ワクチン」と呼ばれ、免疫が長く続きやすいという特徴があります。
(従来のワクチンよりも“記憶する力”を持つ免疫反応を起こしやすい仕組みです。)
■ ニューモバックスを受けた方にも追加接種がおすすめ
すでにニューモバックス®(PPSV23)を接種した方でも、1年以上経過していればキャップバックス®(PCV21)を追加で接種できます。
キャップバックスを打つことで、より多くの菌の型に対応でき、免疫の質や持続性も高めることができます。
さらに、2025年9月に公表された専門家委員会(日本呼吸器学会・感染症学会・ワクチン学会)による最新の見解では、
「ニューモバックス接種後にキャップバックスを接種した場合、以後のニューモバックスの5年ごとの再接種は不要」
とされています【日本呼吸器学会ほか, 2025年9月改訂版】。
つまり、
✅ これまでニューモバックスを受けた方も、キャップバックスを1回追加すれば、
✅ その後はニューモバックスを5年ごとに繰り返し接種する必要がなくなるのです。
■ どんな人におすすめ?
- 65歳以上の高齢者
- 心臓病、糖尿病、慢性呼吸器疾患、腎臓病などの持病がある方
- 免疫が低下している方(ステロイド・抗がん剤などを使用中の方)
- お孫さんなど小さなお子さんと接する機会が多い方
これらの方は肺炎球菌感染による重症化リスクが高く、新しいキャップバックス®(PCV21)の接種が特に推奨されています。
■ 接種のタイミングと注意点
- 他の肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス®など)を打った方は、1年以上あけてから接種します。
- 発熱や体調不良時は延期します。
- 注射部位の赤みや腫れ、軽い発熱などの副反応は数日でおさまることがほとんどです。
■ 費用について
キャップバックス®は自費接種となります。2025年10月29日から接種可能です。
料金:14,500円(税込)
■ 当院の方針
森嶋クリニックでは、
1️⃣ 65歳以上、または基礎疾患のある方には、まずニューモバックス®(PPSV23)を公費で接種。
2️⃣ すでにニューモバックスを接種された方には、1年以上経過していればキャップバックス®(PCV21)を追加接種としてご案内。
3️⃣ キャップバックス®を接種された方は、以後のニューモバックス5年ごとの再接種は不要です。
■ ご相談・ご予約
肺炎球菌ワクチンの種類や接種の時期は、年齢や持病、過去の接種歴によって異なります。
最適な組み合わせを医師がご案内いたしますので、お気軽にご相談ください。
ご予約はお電話でお願いいたします。
参考:
- 日本呼吸器学会・日本感染症学会・日本ワクチン学会合同委員会「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第7版, 2025年9月)」
- MSD社「キャップバックス®筋注シリンジ 製品情報(2025年8月承認)」