なんらかの原因で心臓の機能に異常が生じ、心臓が全身に血液を送るポンプ機能がうまくいかなくなった結果、呼吸困難やだるさ、むくみなどが起こり、これらがだんだん悪くなり、生命を縮めます。

超高齢化社会、平均寿命世界第1位の日本では、心疾患は主な死因の一つで、その中でも高齢化に伴って心不全患者さんが増加しています。

高齢の心不全患者さんが大幅に増加すること=「心不全パンデミック」の発生が懸念されており、入院医療が必要な高齢心不全患者さんで病院があふれ、その他の患者さんを受け止めきれなくなる事態など社会的な問題が起こる可能性が考えられます。

下図の通り、心不全は一度発症すると、回復した後にもさまざまなきっかけで再発することがあります。

回復しても、元の状態には戻らないことも多いです。このため、早期発見・早期治療で状態悪化を防ぐことが非常に重要です。

まだ心不全の症状や明らかな心臓の異常がない段階でも、高血圧、糖尿病、慢性腎臓病、肥満などがある方は「心不全リスク(ステージA)」にあたります。この段階から危険因子をしっかり治療し、心不全の発症を予防することが非常に重要です。

(日本循環器学会 急性・慢性心不全診療ガイドラインより引用・一部改変)

 

症状

心不全を疑う症状には、以下のものがあります。

  • 階段や坂道で以前より息切れする
  • 歩く速度が遅くなった
  • 夜、横になると息苦しい
  • 夜中に息苦しくて起きる
  • 足・すね・足首がむくむ
  • 数日で体重が2~3kg増えた
  • 動悸がする
  • 疲れやすい
  • 食欲が落ちた
  • 夜間の尿が増えた

そして、

高齢者では「息切れ」よりも「疲れやすい」「食欲がない」「活動量が落ちた」といった症状だけのこともあります。

原因

主な原因には、以下のものがあります。

高血圧
長期間の高血圧によって心臓に負担がかかります。

心筋梗塞・狭心症
心筋が傷むことで心臓の収縮力が低下します。

心臓弁膜症
大動脈弁狭窄症、僧帽弁閉鎖不全症などがあります。

不整脈
特に心房細動や頻脈が心不全を引き起こすことがあります。

心筋症

糖尿病・慢性腎臓病・肥満

診断

診察

  • 血圧
  • 脈拍
  • 酸素飽和度
  • 心雑音
  • 肺雑音
  • 下腿浮腫
  • 頸静脈怒張

などを確認します。

心電図

心房細動、不整脈、心筋梗塞の痕跡、心肥大などを確認します。

胸部レントゲン

心臓の大きさや肺うっ血、胸水の有無を確認します。

血液検査

腎機能・肝機能・貧血・電解質・甲状腺機能・心不全のマーカー(BNP・NT-proBNP)などを調べます。

BNPやNT-proBNPは、心臓に負担がかかったときに上昇する血液中の物質で、心不全の診断や重症度評価に役立ちます。

ただし、

BNP/NT-proBNPが高い=必ず心不全、ではありません。

腎機能低下、心房細動、年齢などでも上昇するため、症状・心電図・心エコーなどと合わせて判断します。

当院では、緊急性がある場合には、NT-proBNPを院内で迅速測定できます。


心エコー検査

心不全の診断で特に重要なのが心臓超音波検査(心エコー)です。

心エコーでは、

  • 心臓の収縮力(LVEF)
  • 心臓の大きさ
  • 心臓の壁の厚さ
  • 心臓弁膜症
  • 左室拡張機能
  • 肺高血圧の有無
  • 心嚢液

などを評価します。

心不全は「心臓の収縮力が低いかどうか」だけでは診断できません。心臓の収縮力が正常でも心不全を起こすことがあります。

治療

原因疾患や心不全ステージに応じた治療を行います。

現段階で心不全の可能性が低いと判断された場合でも、危険因子がある患者さんに対しては、予防のための指導や治療を行います。

すでに心不全を発症してしまった患者さんの治療としては、以下の3つがあります。

① 心不全そのものを治療する

利尿薬、SGLT2阻害薬、ACE阻害薬・ARB・ARNI、β遮断薬、MRAなどを、心不全のタイプや状態に応じて使用します。

② 原因となっている病気を治療する

高血圧、心房細動、狭心症・心筋梗塞、弁膜症などを治療します。

③ 心不全を悪化させない

心不全は治療によって症状が改善しても、感染症、不整脈、塩分摂取の増加、服薬中断、腎機能悪化などをきっかけに再び悪化することがあります。

そのため、

「退院したから治療終了」ではなく、再入院を防ぐための継続管理が重要です。

血圧管理、塩分摂取、体重管理、適度な運動、服薬継続などが重要です。

次のような場合は早めに循環器内科へ

  • 以前より階段で息切れする
  • 足のむくみが続く
  • 数日で体重が急に増えた
  • 横になると息苦しい
  • 動悸と息切れがある
  • 健診で心拡大を指摘された
  • BNP・NT-proBNP高値を指摘された

安静にしていても強い呼吸困難がある、胸痛を伴う、意識が悪い、唇が紫色になるなどの場合は、救急受診を検討してください。

森嶋クリニックの心不全診療

当院では循環器専門医が、

  • 心電図
  • 胸部レントゲン
  • 心エコー
  • NT-proBNP迅速検査
  • 腎機能・電解質などの血液検査

を組み合わせ、心不全の診断・治療を行っています。

また、大学病院や総合病院で心不全治療を受けた患者さんの退院後の継続管理、再入院予防にも対応しています。

精密検査や入院治療、カテーテル治療、弁膜症治療などが必要と判断した場合には、連携する循環器専門医療機関へ速やかにご紹介します。

作成・監修: 森嶋 素子 (循環器専門医/日本プライマリ・ケア連合学会認定医)