正常の脈とは、安静にしている時に、規則的なリズムで1分間に50~100回です。運動時や緊張・興奮時に、脈拍数が100回/分以上になることは、正常な体の反応で、病的ではありません。脈拍がこれらを逸脱して、極端に遅かったり、早かったり、不規則な場合を不整脈と呼びます。

診断には心電図、また必要に応じて24時間心電図(ホルター心電図)を行います。

24時間心電図(ホルター心電図)

胸の3カ所に電極シールを貼り、小型の心電計を携帯していただくことで、24時間連続で心電図記録を行います。検査中は普段通りの生活を送っていただきます。発作的に出現する症状の原因を突き止める目的で行う検査です。不整脈や狭心症、失神など、様々な症状の評価・診断に有効です。

不整脈にはさまざまな種類があります。以下に代表的なものを示します。

心室性期外収縮

正常な人でも検査をするとほとんどの人に認められます。しかし、頻度が多い場合は心臓病が隠れていたり、将来、心臓の機能が低下したりする可能性もあり、注意が必要です。

検査の結果、心臓の病気がなく、期外収縮の頻度も少なく、症状も軽度の場合には経過観察を行います。

心臓の病気があれば、その治療を行います。

期外収縮の頻度が多く、症状が強い場合には、薬物治療を行います。薬物治療にて症状の改善が乏しく日常生活に支障をきたしていたり、心臓の機能の低下がみられる場合には、カテーテル治療を行うことができる専門の医療機関をご紹介いたします。

心房細動

心房という心臓の部屋が細かく震えることで脈が不規則になります。また、一般的には脈が早くなります。動悸、息切れ、めまいなどの症状を契機に受診され、診断されることがある一方、症状がなく、検診でたまたま発見されたりすることもあります。

原因としては高血圧、心臓病や肥満、飲酒、睡眠時無呼吸症候群、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)などが挙げられます。高齢になる程発症しやすく、80歳以上の方では5~10%程度の有病率と言われています。

心房細動で問題となるのは、脳梗塞などの血栓症を起こしやすくなることです。心房細動の患者さんの左心房は1分間に300回以上、細かく震えるような動きをし、左心房の中の血液の流れはよどんでいます。よどんだ血液は心臓の中で固まり、血の塊である血栓となります。これが心臓から送り出され、脳の血管に詰まって脳梗塞を引き起こすことがあります。

脳梗塞の20~30%は、心房細動が原因といわれています。また脳以外にも足の血管や内臓の血管に詰まり虚血症状を起こすこともあります。

治療の基本は薬物療法です。抗凝固薬(血液サラサラの薬)により血栓の形成を予防します。また心臓に対するさまざまなお薬を患者さんの状態に合わせて処方します。病状に応じて、カテーテル治療を行う専門の医療機関にご紹介いたします。

発作性上室性頻拍

この不整脈の発作を起こすと、規則的で速い脈(100~200拍/分)となります。発作が起きると、ほとんどの人は動悸症状を自覚します。 極端に脈拍が速いと血圧が下がり、めまいやふらつきも認めることがあります。発作の時の心電図をとることで診断がつきます。薬物治療を行います。薬物治療を行っても発作が頻回で日常生活に支障をきたす場合にはカテーテル治療を検討します。専門の医療機関にご紹介いたします。

洞不全症候群

脈が遅くなる不整脈です。いくつかのタイプがあり、慢性的に脈が遅いタイプ、時々脈が遅くなるタイプ、脈が速くなったり遅くなったり止まったりするタイプなどがあります。

脈が遅い状態が続くと、心臓から全身に送られる血液が不足することで心不全症状を起こしたり、めまいやふらつきが出たり、失神してしまうこともあります。

原因としては、加齢や心臓の病気、電解質のバランスの異常、甲状腺の病気などがありますが、投与されているお薬が原因となることもあります。お薬が原因の場合は、お薬の中止や変更を行います。極端に脈が遅く、症状を伴う場合にはペースメーカーの植え込みが必要となるため、専門の医療機関にご紹介いたします。

房室ブロック

脈が遅くなることがある不整脈です。無症状で検診でたまたま指摘されるものもあります。

重症度によって対応が異なります。加齢によるものが多いですが、心臓の病気(心筋梗塞や心筋炎など)でおこる場合もあります。投与されているお薬の副作用で起こることもあります。病状に応じて、お薬の調整、心臓の病気の治療、ペースメーカーの植え込みを検討します。必要に応じて専門の医療機関にご紹介いたします。