はじめに

「尿酸値が高いと言われたけれど、“プリン体ゼロ”のビールなら大丈夫ですよね?
外来でもよく耳にするご質問です。

残念ながら、答えは 「いいえ、飲みすぎれば尿酸値は上がります」
その理由を、体の中で起きているメカニズムからわかりやすく説明します。


プリン体ゼロ=尿酸が増えない、ではない理由

プリン体は、体の中で分解されて尿酸になります。
ですから「プリン体ゼロ」と書かれていると、「尿酸が増えない」と思ってしまいがちです。

しかし、実際に尿酸値を上げる主な要因は
プリン体そのものよりも「アルコール代謝」にあります。


アルコールを飲むと、肝臓で尿酸が作られる

お酒を飲むと、肝臓では以下のような反応が起こります。

エタノール → アセトアルデヒド → 酢酸

この過程で体内のATP(エネルギーのもと)が大量に使われ、
その分解産物であるAMP → 尿酸
という流れが進みます。

つまり、

🔹 アルコールを代謝すると、その過程で「尿酸が作られる」

のです。プリン体がゼロであっても、アルコールを分解する時点で
体が尿酸を生み出してしまうという仕組みです。


さらに「尿酸が排泄されにくくなる」

アルコールを代謝すると、肝臓で乳酸が増えます。
この乳酸は、腎臓で尿酸と同じ排泄ルートを使うため、
お互いに競合して尿酸が排泄されにくくなる
のです。

つまり
「作られる量が増える」+「出にくくなる」= 尿酸値が上がる

という二重の作用が働きます。


アルコールの種類で違いはある?

種類プリン体アルコール量尿酸への影響
ビール多め(5〜10mg/100mL)最も上昇しやすい
発泡酒少し少ない同様に上昇
プリン体ゼロビール0mgアルコール代謝により上昇
ワイン適量なら比較的良好
焼酎・ウイスキー0mgアルコール作用で上昇
ノンアルコールビールほぼ0mgごく微量または0安全性高い(糖分に注意)

🍶 「プリン体ゼロ」=安全ではなく、「アルコール量」に注目することが大切です。


どのくらいまでならOK?

尿酸値が高めの方は、

  • 週2日以上の休肝日を設ける
  • 1日あたりアルコール量20g未満(中瓶ビール1本、ワイン2杯、日本酒1合程度)

を目安にしましょう。

痛風発作が出ている方は、禁酒が原則です。


まとめ

「プリン体ゼロでも、アルコールそのものが尿酸を作り出します。
“たくさん飲んでも大丈夫”というお酒は残念ながら存在しません。
休肝日を設けて、水分をしっかり摂ることが何よりの予防策です。」

作成・監修: 森嶋 素子 (循環器専門医/日本プライマリ・ケア連合学会認定医)