
診察室で、
「コレステロールは体に必要なものですよね?こんなに下げて大丈夫ですか?」
「LDLコレステロールが50くらいまで下がりましたが、薬を減らしたほうがいいですか?」
と質問されることがあります。
結論からいうと、適切な治療によってLDLコレステロールが低くなった場合、現在のところ「下がりすぎたこと自体」が問題になるという明確な証拠はありません。
特に、心筋梗塞や狭心症などの動脈硬化性疾患をすでに経験した方では、LDLコレステロールをしっかり下げることが再発予防につながります。
LDLコレステロールは「Lower is better」
LDLコレステロールの治療では、よく「Lower is better(低いほどよい)」という言葉が使われます。
これは、LDLコレステロールをしっかり下げるほど、心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患のリスクが低下することが、多くの臨床研究で示されてきたためです。
特に、心筋梗塞や狭心症、冠動脈ステント治療などの既往がある方では、LDLコレステロールを70mg/dL未満、場合によってはさらに低い値まで下げることが重要になります。
実際、LDLコレステロールが20mg/dL未満まで低下した患者さんを含む研究でも、LDLコレステロールが低いほど心血管イベントは少なく、安全性についても大きな問題は認められませんでした。
ただし、「Lower is better」は、すべての人に同じように薬を強くして、できるだけ低くすればよいという意味ではありません。
年齢や糖尿病、高血圧、喫煙歴、腎機能、そして心筋梗塞や狭心症の既往などによって、その人に必要なLDLコレステロールの目標値は異なります。
「コレステロールは脳に必要なのでは?」という心配
確かにコレステロールは、細胞膜やホルモンなどを作るために必要な物質です。
しかし、血液中のLDLコレステロールを下げたからといって、脳のコレステロールまで不足するわけではありません。脳で必要なコレステロールの多くは、脳の中で作られています。
「LDLコレステロールを下げすぎると認知症になるのではないか」という心配についても、大規模な研究では、LDLコレステロールを非常に低い値まで下げても認知機能の低下は認められていません。
脳出血が増える心配は?
LDLコレステロールが低いと脳出血が増えるのではないか、という話を聞いたことがある方もいらっしゃると思います。
現在までの臨床試験を総合すると、LDLコレステロールを薬でしっかり下げることによって、脳出血が明らかに増えるという証拠はありません。
一方で、脳出血の既往がある方などでは個別に考える必要がありますので、主治医と相談しながら治療方針を決めます。
LDLが40や50になったらスタチンを減らす?
必ずしも減らす必要はありません。
大切なのは「LDLコレステロールの数字だけ」ではなく、その患者さんが将来、心筋梗塞や脳梗塞を起こすリスクがどの程度あるかです。
たとえば、心筋梗塞や狭心症を起こしたことがある方、冠動脈にステント治療を受けている方、糖尿病や家族性高コレステロール血症がある方などでは、LDLコレステロールをかなり低い値に維持するメリットが大きい場合があります。
一方で、動脈硬化のリスクが低い方に、必要以上に強い薬を使用して極端にLDLコレステロールを下げる必要があるわけではありません。
LDLコレステロールの目標値は、一人ひとり違います。
「LDLが低いこと」と「スタチンの副作用」は別の話です
LDLコレステロールが低くなったこと自体には大きな問題がなくても、スタチンにはまれに副作用があります。
代表的なものとして、筋肉痛や筋力低下、肝機能検査値の上昇、血糖値への影響などがあります。
そのため、スタチンを服用している方では、症状や血液検査を確認しながら治療を続けます。
「LDLが低くなりすぎたから薬が危険」ということではなく、LDLの値と薬そのものの副作用は分けて考えることが大切です。
院長からひとこと
LDLコレステロールの治療では、「Lower is better」という考え方が基本になっています。
特に、すでに心筋梗塞や狭心症などの動脈硬化性疾患がある方では、LDLコレステロールを十分に下げることで再発リスクを減らすことができます。
LDLコレステロールが40〜50mg/dLになったからという理由だけで、自己判断でスタチンを減らしたり中止したりする必要はありません。
ただし、目標値はすべての人で同じではありません。
その方の年齢や持病、動脈硬化の程度を考えながら、**「どこまで下げるのが、その人にとって最もメリットが大きいか」**を考えることが大切です。
「自分のLDLコレステロールはどこまで下げたほうがよいのだろう?」と疑問に思われた方は、診察の際にお気軽にご相談ください。

