下の血圧が高いのは大丈夫?


「上の血圧(収縮期)は正常だけど、下の血圧(拡張期)が高いと言われた」
「薬を飲んでも、下だけが下がらない」
そんな声をよく耳にします。

今回は拡張期血圧(下の血圧)が高い場合の原因やリスク、治療の必要性についてわかりやすく解説します。


血圧の「上」と「下」の違いとは?

血圧は2つの数値で構成されています。

  • 収縮期血圧(上の血圧):心臓が収縮して血液を押し出すときの圧力
  • 拡張期血圧(下の血圧):心臓が休んでいるときの圧力

若い方では、下の血圧だけが高い「拡張期高血圧」が見られることがあります。


なぜ若い人に多い?拡張期血圧が高くなる理由

若い人の血管は弾力があってしなやかです。そのため、心臓が休んでいるとき(拡張期)にも、血液がしっかり全身に送られ続ける力が強いのが特徴です。

このとき、血液が流れる「通り道」が細くなっていたり、ギュッと締まっていると、心臓が休んでいる間の血圧(=拡張期血圧)が高くなることがあります。

これを「末梢血管抵抗(まっしょうけっかんていこう)」といいますが、かんたんに言えば、「血液の通り道のつまり具合・きゅうくつさ」のようなものです。


拡張期血圧が高くなりやすい要因
  • ストレスや緊張が多い:交感神経が優位になり、血管が締まりやすくなります
  • 睡眠不足や生活リズムの乱れ:自律神経のバランスが崩れ、血圧が不安定になります
  • 塩分やカフェインの摂りすぎ:血管が収縮しやすくなります
  • 運動不足や肥満:血流が悪くなり、体に余分な負担がかかります
  • 喫煙:血管を傷つけて細くし、血圧が上がりやすくなります

特に若い男性やアスリートの方では、筋肉量が多かったり、自律神経が活発なため、拡張期血圧がやや高めになることがあります。


【最新知見】下だけ高くてもリスクはあるのか?

これまで「上の血圧が正常なら、下だけ高くても心血管疾患のリスクは増えない」という説(2017年の研究など)が一般的でした。

しかし、2025年に発表された最新の大規模な国際研究(Bidelら, European Heart Journal)により、以下のことが明らかになりました。

  1. 「下だけ高い」状態も治療のメリットがある: 収縮期血圧の値にかかわらず、高い拡張期血圧を適切に下げることで、心筋梗塞や脳卒中などのリスクを減少させることが示唆されました。
  2. 将来の「上の血圧」の上昇につながる: 若いうちに拡張期血圧だけが高い状態を放置すると、将来的に血管のダメージが蓄積し、収縮期血圧も高い重度の高血圧へ移行しやすいことがわかっています。

つまり、「下だけ高いから大丈夫」ではなく、「下が高い今のうちにしっかり対策をすることが、将来の大きな病気を防ぐ」という考え方が重要になっています。


治療中に「下」だけ残る場合はどうする?

すでに血圧の薬を飲んでいる方で「上は120台なのに下だけ85〜90ある」というケースもあります。

  • 過度な心配は不要ですが、油断も禁物: まずは、家庭での血圧測定を継続しましょう。診察室だけ高い「白衣高血圧」の可能性もあります。
  • 生活習慣の「あと一歩」をチェック: 薬を増やす前に、減塩、十分な睡眠、有酸素運動、節酒などが改善の鍵を握ることが多いです。
  • 個別の判断: 合併症の有無や血管の状態により、目標値は異なります。無理に下げすぎて「上」が下がりすぎてもフラつきの原因になるため、主治医とバランスを相談することが大切です。

拡張期血圧を下げるためにできる生活習慣

拡張期血圧が高めの方におすすめしたい生活習慣は以下の通りです。

  • 🧂 減塩(目標:1日6g未満)
  • 💤 睡眠時間の確保(6〜7時間以上)
  • 🚶‍♀️ 有酸素運動(ウォーキングなど)
  • ☕ カフェインの取りすぎに注意
  • 🚭 禁煙・ストレス管理

まとめ|下の血圧が高めでも慌てず対応を

  • 若い方では拡張期血圧が高いことは珍しくありません
  • 中高年以降のリスクを減らすために、今から生活習慣の見直しが大切です
  • 降圧治療中でも、収縮期が目標に達していれば、拡張期がやや高めでも過度に心配はいりません

血圧について、気になる方は、血圧手帳や家庭血圧の記録をご持参のうえ、お気軽にご相談ください。

作成・監修: 森嶋 素子 (循環器専門医/日本プライマリ・ケア連合学会認定医)