葛飾区金町周辺でも、連日厳しい暑さが続いています。日本の夏は年々暑さを増し、熱中症で救急搬送される方が増えています。
熱中症は、例年ゴールデンウィーク明け(5月上旬)から件数が急増し、7月にピークを迎えます。年間で1,000人以上が命を落とす恐ろしい病気ですが、正しい知識があれば必ず防ぐことができます。
熱中症はなぜ起こる?
私たちの体は、汗をかいたり(自律神経の働き)、涼しい場所へ移動したり(行動)することで、体温を37℃前後に保つようによくできています。
しかし、この「体温調節」が暑さに追いつかなくなると、体内に熱がこもってしまいます。体温が上がりすぎると、全身の細胞がダメージを受け、様々な臓器に負担がかかる「全身の炎症」のような状態になってしまうのが、熱中症の本当の怖さです。
【要注意】やりがちな「間違った」熱中症対策
外来でお話を伺っていると、「良かれと思ってやっている対策」が、かえって体に負担をかけてしまっているケースがよくあります。特に循環器(心臓や血管)の視点から、以下の2点にはご注意ください。

落とし穴①:「塩分タブレット」は日常生活では通常不要です
テレビなどで「水分と一緒に塩分補給を」とよく耳にするため、手軽な塩分タブレットや飴を日常的になめている方が増えています。しかし、冷房の効いた室内での活動や、日常の買い物レベルであれば、追加の塩分補給は原則として不要です。
- 理由:通常の食事を3食しっかりとっていれば、十分な塩分が補給できています。
- リスク:汗をかいていないのに塩分だけを過剰に摂ると、血圧が上昇し、心臓や腎臓に思わぬ負担をかけます。高血圧や心疾患で通院中の方は特に注意が必要です。
※炎天下での長時間の農作業やスポーツ、大量の汗をかくお仕事の際などには、適度な塩分補給(経口補水液)が有効です。
落とし穴②:冷たいお水の「がぶ飲み」は胃腸と心臓の負担に
暑い外から帰ってきたとき、氷でキンキンに冷えた水や麦茶を一気にがぶ飲みしたくなりますよね。しかし、これも体にとっては大きなストレスになります。
- 胃腸の働きが低下:冷たい飲み物を一度に大量に飲むと、胃腸が急激に冷やされて消化不良や食欲低下(夏バテの原因)を引き起こします。
- 心臓への負担:急激な温度変化は自律神経を乱し、一度に大量の水分が血管内に入ると、全身に血液を送り出す心臓にも一時的な負荷がかかります。
今日からできる!正しい予防と対策
熱中症を防ぐための、正しい毎日の習慣をご紹介します。
- 正しい水分補給:「喉が渇く前」に、「コップ1杯(150〜200ml)程度」を「こまめに」飲むのが鉄則です。温度は常温、または少し冷たい程度(5〜15℃)が胃腸への負担も少なくなります。
- 体を暑さに慣らす:春先からウォーキングなどの軽めの運動で、上手に汗をかく習慣(暑熱順化)をつくりましょう。
- 暑さを避ける:外出は涼しい時間帯を選び、日傘・帽子を活用しましょう。室内では我慢せずにエアコンを適切に使用してください。
- しっかり食べて寝る:寝不足や朝食抜きは、暑さへの抵抗力を下げてしまいます。
熱中症のサイン(こんな症状に注意!)
もし以下のような症状が出たら、我慢せずにすぐに対処してください。(※日本救急医学会の分類より)
- 【軽症】立ちくらみ、足のつり、大量の汗:
すぐに涼しい場所へ移動し、休ませて水分を摂りましょう。 - 【中等症】頭痛、吐き気、強いだるさ:
自力で水分が摂れない場合は、すぐに医療機関を受診してください。 - 【重症】意識がもうろうとする、けいれん:
迷わず救急車を呼んでください!
※ご高齢の方や持病のある方は、体温がそれほど上がらなくても熱中症になることがあります。「いつもと違う」と感じたら、軽い症状でも油断は禁物です。
まとめ
熱中症対策の基本は、特別なサプリメントに頼ることではなく、「3度の食事」「こまめな水分補給」、そして「エアコン等の適切な使用」です。
おかしいな、と感じた時や、夏場の血圧変動・動悸などが気になる時は、無理をせずに当院までお気軽にご相談ください。
暑さと上手に付き合い、健康な夏を過ごしましょう!
【参考文献】
・総務省消防庁. 令和6年(2024年)熱中症による救急搬送状況.
・日本救急医学会. 熱中症診療ガイドライン2024.
・環境省. 熱中症環境保健マニュアル2023.

