
「スマートウォッチで心臓の病気が早期に見つかるらしい」——そんなニュースを耳にしたことはありませんか?
Apple Watch には心拍センサーと 1 誘導心電図(ECG)アプリが搭載されており、とくに心房細動(AF) の早期発見ツールとして世界的に注目されています。
今回は、スタンフォード大学と Apple社 が 42 万人以上を対象に実施したApple Heart Study の結果をもとに解説します。
1. Apple Watch でできる 3 つのこと
- 心拍数の常時計測 — 安静時や運動時の心拍数を自動で記録。
- 不規則な心拍の通知 — 脈の乱れを検知すると iPhone に「不規則な心拍の通知」を表示。
- ECG アプリによる 1 誘導心電図 — Series 4 以降なら 30 秒で波形を記録し、心房細動/洞調律 を自動判定。
こうした機能により、症状がない「隠れ心房細動」を拾い上げることが期待されています。
2. Apple Heart Study とは?
研究概要
- 実施期間:2017 年 11 月〜2018 年 7 月(8 か月)
- 対象:米国在住の Apple Watch + iPhone ユーザー 419,297 人
- 方法
- 常時モニタリング
Apple Watch が光学式センサーで脈拍を継続的に監視し、リズムの乱れを検知。 - 異常通知
不規則な脈が検出されると、iPhone に「心拍が不規則です」と通知。 - 遠隔診療
専用アプリからビデオ通話で医師と面談し、検査の必要性を判断。 - シール型心電図モニターの装着(7日間)
医療機関から郵送された薄型の“貼る心電図シール”を胸部に装着し、日常生活を送りながら 1 週間連続で心電図を記録。 - データ解析と診断
使用後にモニターを返送し、医師が記録を解析。これにより 心房細動の有無 を正式に評価。
- 常時モニタリング
主要結果
- 不規則脈通知を受けたのは0.52%(2,161 人)のみ — 通知が乱発される心配は小さい。
- シール型心電図モニターを記録した 450 人のうち34%で心房細動を確認。
- 不整脈の通知直後に Apple Watch と シール型心電図モニターを同時に装着したサブ解析では、陽性的中率84%。
⇨Apple Watch から「不規則な心拍」と警告を受け取った 100 人のうち約 84 人で本当に心房細動が確認されたという意味
研究の限界と注意点
- Apple Watchが 心房細動 を「見逃していないか(感度)」は検証できていない
- シール型心電図モニターの装着は通知から平均 13 日後であったため、心房細動 が一過性に終わった場合に検出できなかった可能性がある。
3. こんなときは医療機関へ
Apple Watch の通知で必ず病気があるとは限りませんが、心房細動は脳梗塞の大きな原因となる不整脈です。
- 「不規則な心拍の通知」を受けた
- 動悸・息切れ・めまいが続く
- 過去に心臓病や脳梗塞の既往がある
該当する方は、早めの受診をおすすめします。
4. 森嶋クリニックでできること
- Apple Watch の ECG 波形確認(iPhone で PDF 書き出し→院内i Padに転送)
- 12 誘導心電図・ホルター心電図・血液検査による精密評価
- 心房細動と診断された場合のリスク評価(CHADS2-VASc)と抗凝固療法のご提案
- 動悸の原因検索(甲状腺機能・貧血評価など)
Apple Watch で通知が出たら、ご予約はこちらからお気軽にご相談ください。
参考文献
- M. Turakhia et al. Large-Scale Assessment of a Smartwatch to Identify Atrial Fibrillation. N Engl J Med 2019.
- Stanford Medicine News Release. Through Apple Heart Study, researchers show potential of wearable technology. 2019.
- ACC Press Release. Apple Heart Study Identifies Afib in Small Group of Apple Watch Users. 2019.