
この数週間、「りんご病」の患者さんを診察する機会が多くありました。
「りんご病」とはどんな病気でしょうか?
「りんご病」(伝染性紅斑)は、ヒトパルボウイルスB19によって引き起こされる感染症で、大人にも感染します。
ただし、大人と子供では症状が異なります。
子供の場合
特徴的なのは、両頬のびまん性紅斑(りんごのような赤い発疹)です。
その後、四肢や体幹に網状またはレース状の発疹が現れます。
発疹は通常、7~10日程度で消失します。
大人の場合
子供のような特徴的な頬の紅斑はあまり見られません。
軽度の上気道炎、筋肉痛、関節痛、非典型的な紅斑などの症状が出ることがあります。
不顕性感染(症状が出ない感染)であることも少なくありません。
感染経路と感染力
飛沫感染で家庭内感染が多いです。
感染力が最も強いのは、発疹が出現する約1週間前で、この時期には、血液中に大量のウイルスが存在し、口腔内や唾液にも排出されます。
発疹が出現する頃には、感染力は低くなります。
妊婦への影響
妊婦さんが感染した場合、胎児にも感染する可能性があります。
胎児が感染すると、貧血、心不全、胎児水腫、胎児死亡を引き起こす可能性があるため注意が必要です。
妊婦さんは、感染者との接触を避け、手洗いやマスク着用などの予防策をとりましょう。
何度も感染することはある?
「りんご病」(伝染性紅斑)は一度かかると終生免疫が得られ、通常は再感染しないとされています。
成人で抗体を持っている人は約50%、60歳以上では約80%と言われています。
診断
お子さんの場合、診断は、特徴的な顔の皮疹と周囲の流行状況により行うことが可能です。
大人の場合には、皮疹が目立たないことが多いですが、四肢や体幹に出ることが多いです。「りんご病」のお子さんとの接触歴などを参考に診断します。妊婦さんの場合には血液検査で抗体を検出する検査を行う場合もあります。
治療
通常は自然に治癒します。
皮膚の痒みが強い場合には、抗ヒスタミン薬を処方することがあります。
抗ウイルス薬は、現段階では開発されていません。
予防
現在、実用化されているワクチンはありません。
感染力が最も強いのは、発疹出現前の時期であるため、発疹が出現した人を隔離しても感染予防にはなりません。
妊婦さんは、感染者との接触を避け、手洗いやマスク着用などの予防策をとることが重要です。