
以前のブログで、認知症のリスク因子についてご説明いたしました。
今回は、その中の「高血圧と認知症の関係」について、現在までにわかっていることをお話しいたします。
中年期(40〜60歳)の高血圧が、老年期における認知症の発症リスクを高めることが、これまでの多くの研究から明らかになっています。
たとえば、ホノルル在住の日系男性を対象に平均25年間にわたり行われた「Honolulu-Asia Aging Study」では、中年期の収縮期血圧(いわゆる“上の血圧”)が120mmHg未満の人と比べて、120〜139mmHgの人では1.64倍、140mmHg以上の人では2.66倍、アルツハイマー型認知症を含む認知症の発症リスクが高まることが報告されています。
では、高血圧を治療することで認知症のリスクを減らすことはできるのでしょうか?
この点についても、興味深い研究が報告されています。認知機能が正常な40歳以上の高血圧患者さんを対象とした調査では、降圧薬による治療によりアルツハイマー病の発症リスクが約6%低下することが示されました。さらに、降圧薬の中でもアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)を使用していた患者さんでは、他の降圧薬を使用していた患者さんと比較して、よりリスクが低下していたこともわかっています(Adesuyan M, et al. J Prev Alzheimers Dis. 2022;9:715-724)。
一方で、老年期(70歳以降)の高血圧が認知症リスクにどの程度関係しているかについては、まだ明確な結論は出ていません。一部では、加齢に伴い血圧が低くなりすぎることが脳への血流低下を招き、かえって認知機能に悪影響を及ぼす可能性も指摘されています。
以上を踏まえると、特に中年期(40〜60歳)のうちに高血圧を適切にコントロールすることが、将来の認知症予防において非常に重要であると考えられます。
高血圧は自覚症状のないまま進行することが多いため、定期的な健康診断や血圧測定を行い、必要に応じて早期からの生活習慣改善や薬物治療を行うことが大切です。
森嶋クリニックでは、高血圧の診療に加えて、認知症予防にも力を入れています。
気になる症状や血圧のコントロールについてのご相談がありましたら、どうぞお気軽にご来院ください。